エミール・ガボリオ「ファイルナンバー113:ルコックの恋」を読んで

同じくガボリオの「オルシバルの殺人事件」に続いて、牟野素人氏による超サービス価格108円で思わず購入してしまった「ファイルナンバー113:ルコックの恋」の感想です。
今回読み終わるのに少々時間がかかってしまいましたが、また感想を書きたいと思います。

さて、「オルシバルの殺人事件」に続いて、またもルコックが探偵能力を最大限に発揮して活躍します、と書きたいところでしたが、当初活躍するのは栗鼠とあだ名されるファンフェルローという功名心に駆られた小柄な刑事。
ルコックはなかなか出てきません。
副題に「ルコックの恋」とまで謳われている以上ルコックが出てこないことはないと思いましたが、この構成には読んでいてしばらく戸惑いました。もちろん、しばらくしてルコックは登場し、完全にルコックが主役になりましたけど、変装して活躍する時間が長いのと、オルシバルで「目つきの鋭い精悍な小男」と表現されていたのが「ハンサムな若い男」と描写されるという微妙な人物像のブレにも若干違和感がありました。
なお、「オルシバルの殺人事件」の感想では、本作の方が先に書かれたのかもと書きましたが、(研究者ではないので分かりませんが)印象としてはルコックの警察内での地位がより高まっているように思えるので本作の方が後かも知れません。ただ、どちらを先に読んでもまったく問題がないと断言できる内容です。
今回も自分なりにあらすじを書いてみます。

ある日金融家アンドレ・フォヴェル氏の金庫からクラムラン侯爵(初登場時は伯爵と記載)が預けていた30万フランが盗まれた。
鍵を持ち金庫を開けるために必要な暗号を知っているのはフォヴェル氏と出納係のプロスペル・ベルトミーのみ。
あらゆる状況から見て疑わしいプロスペルが逮捕されるが、それを不当と考えたプロスペルの父親の友人ヴェルデュレーが動き出し、この事件の解決には過去を探ることが重要だと調査を始める。

ネタバレになってしまいますが、今回は基本的に盗難事件です。盗難だけではありませんが、いずれにしても推理成分はかなり薄め。金庫がどのようなシチュエーションで開けられたかが推理される以外はほぼ推理の部分はありません。
そして、またオルシバルと同じように途中から昔の愛憎劇ドラマが始まります。まあ、今回もほぼこのドラマ部分が中心で、ちょっと探偵小説のスパイスを加えましたといった作品ですね。
正直二作連続で同じような作品を読んでしまうと少々飽きがきたのは確かですが、それでもこのドラマ部分の構成はよくできています。特に黒幕がどのように悪知恵を振り絞ってチャンスを最大限に生かして犯罪を成功させようとしたのか、という部分がなかなか巧みに描かれています。
探偵小説として読むと物足りない作品ではありますが、この辺りの(貴族が絡む)家庭のドラマ的なものを描く構成力と人物描写は抜きん出て優れていると感じます。きっと現代の日本で昼ドラを書かせたらトップをとれるのではないでしょうか?(笑)
しかし、今回読んだこの本は副題として「ルコックの恋」とついてますが(Wikipediaを読む限り原題にはついてないと思われます)、つける必要があったとは思えないほど、ルコックの恋についてはつけたし程度。それに、ルコックが動き出す動機としても個人的にはかなり説得力がないのではないかと思いました。

ということで、お勧め度としては微妙なところですが、「オルシバルの殺人事件」とどちらを先に読むかということが影響するかと思います。中身が違っていても、ほぼ同じ構成の2作なので、後に読んだ方がちょっと飽きてしまうかなあ、と。
でも、推理成分は「オルシバルの~」の方が少し多めでしょうか。
まあ、本格的な探偵モノだったら先日感想を書いた「怪奇探偵 写楽炎」がお勧めということで。(笑)

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