根本尚「怪奇探偵 写楽炎」感想

エミール・ガボリオを読んだ後Amazonにサジェストされた「怪奇探偵 写楽炎」がちょっと気になっていたのですが、キャンペーンでKindle Unlimitedに3ヶ月登録することにしたので、ちょうど読み放題対象になっていたこともあり、読んでみました。

漫画はあまり読まないのですが(というか、電子書籍のキャンペーンって漫画ばかりで、少しは小説もやれよと思ってしまいます)、芦辺拓、有栖川有栖、二階堂黎人と、錚々たる面々が絶賛していると書かれていたので、ちょっと読んでみようかな、読み放題だし、と軽い気持ちで読み始めました。
正直一巻である「蛇人間」までは「ふーん」という感じで、二巻は読まなくても良いかなあ、くらいに思っていたのですが、二巻、三巻と尻上がりに面白くなり、結局最後まで読んでしまった今は続きが読みたいなあ、と願っているところです。

あらすじは特に必要ないと思いますが、部員減少により同好会に格下げされて一緒の部室に押し込められている実験部の先輩こと写楽炎(しゃらく ほむら)と空手くんこと山崎陽介のコンビが怪奇で陰惨な事件を次々に解決していくというストーリーです。

グロテスクなシーンも多いので、読むのに向かない人もいるでしょうけど、まあ絵がアレですし、目を背けたくなるようリアルさはないのでご安心を。
ゴシックホラーは大好きだけどスプラッタなどは大嫌いな自分が言うので、多分大丈夫ではないかと思います。(想像力がものすごく強力な人は駄目かも知れませんけど)
内容としてはタイトル通り怪奇な道具立てを利用した凄惨な事件を、非科学的なことを信じない女子中学生の炎が明晰な頭脳で謎をズバズバ解き明かしていきます。怪奇に始まった事件は解決後も決してハッピーエンドという訳ではなく、犯人が逃走してさらなる事件を起こしたり、後味の悪い不気味な追補があったりして、一筋縄ではいかない終わり方で、ある意味二度楽しめるエピソードも多くあります。
漫画として書かれた推理モノを読むというのもあまり経験がなかったのですが、レトリックや構成を駆使して読者を騙す方法が使えないのは大変そうと思う反面、何気ない背景に伏線になるものを書いてあったり、トリックの解説も図解なので分かりやすくて、これはこれで面白いな、と感じました。
スタイルとしてはいわゆる本格ものというのですかね。怪奇な部分だけに逃げないで正面からトリックに向き合っています。
誰もが思うように乱歩を継承するような作品とは言えますが、アイディアが枯れてしまった時代の乱歩より、ずっと良いのではないでしょうか?

エピソードの中で特に面白いと思ったのはページ数的にも力が入っているのが分かる2巻の「妖姫の国」と3巻の「蝋太郎」、そして「冥婚鬼」も良かったです。「死人塔」も終わったと思ったら予想外のエピソードが続くところも秀逸でしたね。
また、炎の推理は冴え渡ると言っても、すべてを解き明かすことができないこともあります。そのために危機に陥った「骸絵」などもスリリングで、ただの推理モノに終わらない良さがあると思いました。「骸絵」だけでなく、結構、というか基本的に探偵コンビは巻き込まれ型で、様々な偶然から二人が事件に関わることが多いのですが、その時いつも炎の窮地を救う空手くんは頼もしくて、好感が持てます。空手くんはワトソン的ではなく、どちらかというと「相棒」での杉下右京の相棒亀山薫的なキャラクターですかね。他のレギュラーは割とクールで名前無しの刑事のみ(なぜか愛銃がモーゼル ミリタリーというのが?ですが)。舞台は霜山県(富山がモデル?)で地方の知られざる風習や事件があってもおかしくないと思わせることで怪奇な展開も幅が広がっています。
絵としてはうまい!と褒められるような絵とは言えないと思いますが、結構映像化もいけそうな作品ではないでしょうか?

読んだ本すべての感想をこのブログに書いている訳ではありませんが、今回ガボリオに続いて感想を書いたのは、この作品はもっと評価されて良いのではないかと思ったからです。
Kindle Unlimitedの対象作品は失礼ながら多少旬の過ぎた作品が多い印象ですが、元々同人の作品だとは言え、もっと多くの人の目に触れても良いクォリティを持った内容だと思います。
ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか?

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